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全米チャートで7週連続No.1を達成、ワールドワイドで1億400万枚以上のセールスを記録した『Thriller』からのセカンド・シングル。もともとは“Not My Lover”なるタイトルがつけられていたこの曲は、マイケルのストーカー体験が綴られた非常にパーソナルかつスキャンダラスな内容をもっているが(ちなみに、この「ビリー・ジーン」というキャラクターについては『Thriller』のオープニングを飾る“Wanna Be Startin' Somethin'”でも言及されている)、結果的に彼のキャリアを通じての最大のヒット曲となった。MTV時代の到来を高らかに告げたスティーヴ・バロン製作のショート・フィルム、初めてムーンウォークを披露したモータウン25周年記念番組『Motown 25: Yesterday, Today, Forever』での鮮烈なパフォーマンスも忘れ難い。カヴァーはブラックストリートやシャインヘッド、イアン・ブラウンなど。サンプリング使用例にはアリーヤ“Got To Give It Up”やオール・ダーティ・バスタード“Got Your Money”などがある。『Thriller』の25周年記念盤に収録されたカニエ・ウェストによるリミックス・ヴァージョンの興奮も記憶に新しい。 |
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『Bad』からカットされた4枚目のシングル。全米チャート2週連続1位を記録。『Bad』のリード・シングル“I Just Can't Stop Loving You”でマイケルのデュエット・パートナーを務めていたサイーダ・ギャレット、のちにアラニス・モリセット『Jagged Little Pill』のプロデュースを手掛けることになるグレン・バラードとの共作による壮大なスケールのバラード・ナンバーだ。ワイナンズらをバックグラウンド・ヴォーカルに起用したゴスペル・タッチのアレンジはアンドレア・クラウチによるもので、彼はこの仕事をきっかけにマドンナ“Like A Prayer”やリック・アストリー“Cry For Help”などを手掛ける人気アレンジャーとなった。マイケルが曲に託した意図をより深く理解する意味で、マハトマ・ガンディー、マーティン・ルーサー・キング、ジョン・レノンらの生前の映像を使用したメッセージ性の強いショート・フィルムもぜひチェックしていただきたい。カヴァーは先述したサイーダのリメイクが有名。マーク・ロンソンの主宰レーベル=Allidoに所属するライムフェストがリリースしたミックステープ『Man In The Mirror』を思い出すヒップホップ・ファンも多いだろう。 |
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『Bad』からの7枚目のシングル。全米チャート最高7位を記録。ソリッドなエレクトロ・ファンク・サウンドももちろん魅力的ではあるけれど、この曲の人気を決定的にしたのはやはり映画『ムーンウォーカー』にも組み込まれていた30年代のナイトクラブを舞台とするショート・フィルム(約40分に及ぶ長尺のものを含め、計4ヴァージョン存在する)。敬愛するフレッド・アステアを気取った真っ白なスーツに身を包み、例の「反重力傾斜」(マイケルはこのパフォーマンスを行なうのに必要な装置に関して特許を取得している)をきめる群舞シーンはあまりにも衝撃的だった。サンプリング使用例はアイス・キューブ“Givin' Up The Nappy Dug Out”など。カヴァー・ヴァージョンでは、全英チャートで最高3位、オーストラリアでは見事1位を獲得したエイリアン・エイント・ファームのハードロック・リメイクがよく知られている。 |
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全米チャート最高4位にランクした『Thriller』からの7枚目のシングル(当初は“Starlight”というタイトルが冠せられていた)。この曲に関しては、もはや映像と切り離して語ることはできないだろう。約14分に及ぶホラー映画仕立ての構成、意表をつく巧妙なストーリー展開、当時の最先端の技術を駆使した特殊メイク、マイケル・ピーターズの振り付けによるスリリングな群舞シーンなど、『ブルース・ブラザーズ』でおなじみのジョン・ランディスが監督を務めたショート・フィルムはなにもかもがセンセーショナルだった。1999年にMTVが発表した「100 Greatest Music Videos Ever Made」ではマドンナ“Vogue”やニルヴァーナ“Smells Like Teen Spirit”を抑えて堂々の1位を獲得、「最も商業的成功をおさめた音楽ビデオ」ということでギネス・ブックにも登録されている。ソングライティングは『Off The Wall』の大ヒットに多大な貢献を寄与したヒートウェイヴのロッド・テンパートンが担当。『肉の蝋人形』や『ハエ男の恐怖』などで知られる怪奇俳優、ヴィンセント・プライスの「ラップ」も曲のテンションを高めるのに一役買っている。サンプリング使用例はプロディジー“The Way It Is”など。先述した元ストーン・ローゼズのイアン・ブラウンは“Billie Jean”に続きこの曲のリメイクにも挑んでいる。 |
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『Thriller』からのサード・シングルで、3週にわたって全米チャートを制覇。1984年のグラミー賞では見事レコード・オブ・ジ・イヤーを受賞している。曲の誕生の背景に「アルバムにはパワフルなロックンロール・ソングがいる。ザ・ナック“My Sharona”のブラック・ミュージック・ヴァージョンみたいな曲が必要だ」というクインシー・ジョーンズの提言があったことはあまりにも有名。曲中で壮絶なギター・ソロを披露するエドワード・ヴァン・ヘイレン(ヴァン・ヘイレン)の参加もやはりクインシーのアイデアによるものであった。映画『ウエスト・サイド・ストーリー』に着想を得たと思われるボブ・ジラルディ監督のショート・フィルムももちろん傑作。カヴァーにはスーパーグラスやミルトン・ナシメント、ジョン・メイヤーをフィーチャーしたフォール・アウト・ボーイのヴァージョンもあるが、ウィアード・アル・ヤンコビックによるマイケル公認のパロディ・ソング“Eat It”を代表作としたい。『Thriller』の25周年記念盤ではファーギーが参加したウィル・アイ・アムによるリミックスを聴くことができる。 |
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全米チャートで2週連続1位を記録した『Bad』からのセカンド・シングル。最初はプリンスとのデュエット・ソングとして構想が練られ、実際に本人を招いてミーティングも行なわれたが、彼は「僕なんかがいなくてもこの曲はヒットするさ」と言って共演を辞退した。マイケルが「ストリートについての歌」と説明するリリックは、治安の悪い街で育った少年が寄宿学校での生活を経て再び地元に戻ってきた際の戸惑いを描いたもの。『タクシー・ドライバー』『グッドフェローズ』の巨匠マーティン・スコセッシが監督を務めるショート・フィルムは基本的にこの歌詞をベースに作られているが、18分の長尺版では強盗に間違われて警官に射殺された17歳の少年エドモンド・ペリーの事件(1985年)を取り入れている。ロバータ・フラックやウェズリー・スナイプスの出演、そしてもちろんダンス・シークエンスの充実ぶりもあり、マイケルのフィルモグラフィのなかでも特に見応えのある内容だ。最後になってしまったが、モダン・ジャズ・オルガンの始祖、ジミー・スミスのハモンド・ソロにも注目。カヴァーは“Eat It”に続くウィアード・アル・ヤンコビックのマイケル・パロディ第2弾“Fat”が名高い。 |
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『Dangerous』からのファースト・シングルで、全米チャートでは“Billie Jean”と並ぶ自己最高の7週連続1位を記録。“Beat It”でのエドワード・ヴァン・ヘイレン、“Dirty Diana”でのスティーヴ・スティーヴンス(ビリー・アイドル・バンド)に続く「ギター・ヒーロー物」として、ここではガンズ&ローゼズのスラッシュを大々的にフィーチャーしている(彼は同じ『Dangerous』収録の“Give In To Me”にも参加)。プロデュースを務めるのはマイケル自身と、のちにシェリル・クロウ“All I Wanna Do”でグラミー賞を受賞することになるビル・ボトレル。ボトレルはギターやパーカッションをプレイしているほか、ラップ・パートのリリックも書いていたりと八面六臂の活躍をみせている。“Thriller”と同じジョン・ランディスが監督、マコーレー・カルキンやタイラ・バンクスらが出演するモーフィングを多用したショート・フィルムも大いに話題を集めた。 |
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マイケルが主宰する慈善団体「The Heal The World Foundation」のテーマ・ソングとなる『Dangerous』からの6枚目のシングル。全米チャートで最高27位にとどまるなど大きなヒットにこそ結び付かなかったが、ギネス・ブックで「最もチャリティ活動を行なった人物」に認定されたこともある「活動家:マイケル」を象徴する楽曲として強い印象を残すことになった。真摯でエモーショナルなメッセージ、美しく親しみやすいメロディも含め、マイケルが残したバラードのなかでも特に普遍性の高いナンバーと言っていいかもしれない。真っ直ぐに心を揺さぶってくるコンシャスなショート・フィルムもすばらしい。プロデュースはマイケルと、『Off The Wall』以降のマイケル作品のエンジニアを務めてきたブルース・スウェディエンが担当。バッキング・ミュージシャンにはデヴィッド・ペイチ、スティーヴとジェフのポーカロ兄弟などTOTOのメンバーの名を確認することができる。カヴァーには“Heal Massa God World”と改題して取り上げたウェイン・ワンダーのレゲエ・リメイクがある。 |
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全米チャートで4週連続No.1に輝いた『Off The Wall』からのセカンド・シングルで、ロッド・テンパートンがマイケルに書き下ろしてきた数々の傑作のなかでも間違いなく極上の部類に入る珠玉のスムーズ・ダンサー。カヴァー・ヴァージョンは、クインシー・ジョーンズ『Q's Jook Joint』で聴けるブランディによるリメイクのほか、UKのD・インフルエンスも取り上げている。サンプリング使用例はアシャンティ“Rock Wit U (Aww Baby)”のリミックス、デ・ラ・ソウル“Cool Breeze On The Rocks”など。 |
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全米チャートで最高7位にランクした『Thriller』からの5枚目のシングル。TOTOのスティーヴ・ポーカロと、ホイットニー・ヒューストン“One Moment In Time”やマドンナ“Crazy For You”などで知られるジョン・ベティスとの共作。当初クインシーはマイケル・センベロが書いた“Carousel”(のちに『Thriller: Special Edition』に収録)をアルバムに収録しようと考えていたが、レコーディングの最終段階でこの曲と差し替えることにした。なお、神秘的なタイトルの意味について、マイケルは自伝『ムーンウォーク』のなかで「"Human Nature" is "music with wings"」と説明している。カヴァーはジョージ・ハワードやマイルス・デイヴィス、ボーイズIIメンなど。サンプリング使用例は、SWV“Right Here/Human Nature”をはじめ、NAS“It Ain't Hard To Tell”、2パック“Thug Nature”、ブラックストリート“Why, Why”、ニーヨ“So Sick (Remix)”、タイラ・B“Givin' Me A Rush”など、どれも傑作揃い。 |
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1985年最大のヒット・シングルであり、グラミー賞のレコード・オブ・ジ・イヤーとソング・オブ・ジ・イヤーを受賞したポップ・ミュージック史上に残る一大プロジェクト「USA For Africa」によるチャリティ・シングルのデモ・ヴァージョン。2004年にリリースされたCD4枚+DVD1枚からなるマイケル初のボックス・セット『The Ultimate Collection』で日の目を見た。レイ・チャールズやボブ・ディラン、スティーヴィー・ワンダー、ブルース・スプリングスティーンら総勢37名ものトップ・シンガーが結集した完成版に対し、こちらは全編をマイケルがひとりで歌う非常に貴重なテイク。リリースされたものと歌詞がだいぶ異なっていることを考えると、共作者であるライオネル・リッチーが手をつける前の段階で録音したものと思われる。 |
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ポール・マッカートニー『Pipes Of Peace』からのシングル・カットで、全米チャートを6週にわたって制した大ヒット曲。この『Pipes Of Peace』では“Say Say Say”のほか“The Man”でもポールとマイケルのコラボを聴くことができるが、これらは共にポールの前作『Tug Of War』のセッション時に雛形ができあがっていたもので、それから約1年後、『Thriller』収録のポールとマイケルの共演曲“The Girl Is Mine”の制作タイミングで完成を迎えている。プロデュースは「5人目のビートルズ」ことジョージ・マーティン。“Beat It”を手掛けたボブ・ジラルディ監督、リンダ・マッカートニーやラトーヤ・ジャクソンの出演もあるビデオ・クリップも文句なしに楽しい。余談になるが、『Off The Wall』収録の“Girlfriend”はポール率いるウイングスのカヴァー(収録アルバムは『London Town』)。 |
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実妹ジャネットとのデュエットが実現した『HIStory』からのファースト・シングルで、映画『フリー・ウィリー2』の主題歌である“Childhood”とのダブルAサイドとしてリリースされた。全米チャート最高5位にランク。プロデュースはマイケルとジャネットに加え、当時のジャネットのブレーンであったジミー・ジャム&テリー・ルイスも名を連ねている。なお、ジャネットの“Got 'Til It's Gone”やジェイ・Z“99 Problems”などを監督したマーク・ロマネクの手によるビデオ・クリップは「史上最も製作費がかかった音楽ビデオ」とされていて、そのコストはなんと総額700万ドルにものぼるという。 |
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マイケルとニュー・ジャック・スウィングとの幸福な出会いを最良の形で伝えてくれる『Dangerous』からのセカンド・シングル。全米チャート最高3位。プロデュースはマイケル本人と、ガイ/ブラックストリートのテディ・ライリー。ソングライティングにはテディの片腕として知られるバーナード・ベルの名もクレジットされている。エディ・マーフィーやマジック・ジョンソンらが出演する古代エジプトを舞台としたショート・フィルムも最高。監督は『ボイーズ・ン・ザ・フッド』や『ハイヤー・ラーニング』を手掛けたジョン・シングルトン。 |
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ロッド・テンパートンが手掛けた『Off The Wall』からのサード・シングル。全米チャート最高10位。ロッドは作曲にあたって、マイケルがリズム感を出しやすいように極力短い音符でメロディを構成するよう努めたそうだが、その最もわかりやすく完成度の高い例としてこの“Off The Wall”をあげている。サンプリング使用例はチャブ・ロック“Enjoy Ya self”のほか、最近ではマライア・キャリーが“I'm That Chick”で引用していた。日本の古くからのファンにとってはマイケルが出演していたSUZUKIのスクーター「LOVE」のCMソングとしてなじみ深い曲だろう(“Don't Stop 'Til You Get Enough”を使ったヴァージョンもある)。 |
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『Ben』収録。スティーブン・ギルバートのベストセラー小説をフィル・カールソン監督が映画化した『ベン』のテーマ・ソングで、当時13歳だったマイケル初の全米No.1ヒットでもある。ゴールデン・グローブ最優秀歌曲賞受賞曲。ソングライティングは映画音楽のエキスパートであるドン・ブラック(『野生のエルザ』『007/サンダーボール作戦』『ミニミニ大作戦』ほか)とウォルター・シャーフ(ポケット一杯の幸福』『ファニー・ガール』『夢のチョコレート工場』ほか)のコンビ。プロデュースにはジャクソン・ファイヴの一連のヒット・シングルを手掛けてきたザ・コーポレーションを起用している。もともとはドニー・オズモンドのために書かれた曲だったが、彼がツアー中でレコーディングの機会がなかったため急遽マイケルに白羽の矢が立てられた、という逸話が残されている。カヴァー・ヴァージョンとしてはボーイゾーンが取り上げていたほか、パール・ジャムがアンサー・ソング的な内容の“Rats”をリリースしている。2005年にはドラマ『あいくるしい』の主題歌に使用された |
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今回のコンピレーションのリリースに合わせて作られた、『Thriller』収録曲のみで構成されたメガミックス。プロデュースはイギリスをはじめとする世界30ヵ国以上のチャートでNo.1を獲得したRun DMC“It's Like That”のリミックスで名を上げたジェイソン・ネヴィンズ. |