武道館ライヴ・レポート!
タキチが語る、「彼のギターはワンダーランド!」
平成の終わりが迫ってきた、4月10&11日、武道館にGuitarの嵐が吹き荒れる。最新作となる『ザ・サーチ・フォー・エヴリシング』(2017年4月発売)を引っ提げて現代の3大ギタリストの1人、ジョン・メイヤーが5年ぶりに待望の来日を果たしたのだ。
筆者の私こと、タキチは熱心なジョン・メイヤー・ファンながら、普通のサラリーマン。ですので、ここでは音楽的並びに楽曲的な考察は遠慮し、ジョン・メイヤー・サウンドの骨格とも言えるギターサウンドついて掘り下げてみた。ギターに関しては語りたい、特にジョン・メイヤーのギターについては!
ここ最近大きく変わったのは、トレードマークだったFender社Stratocaster『Black1』がPaul Reed Smith社(以後P.R.S)John Mayer Signature Model『Silver Sky』に変わったこと。このギターはP.R.Sとジョン・メイヤーが3年の歳月をかけ、音や形にこだわったギターだ。
(PRS Silver Sky John Mayer Signature Tungsten)
ギターアンプは複数同時に鳴らしていて、まずP.R.Sバックアップの元、P.R.S John Mayer Signature Model J-MOD 100を作り、使用している。その横に置いてあるのが、ジョン・メイヤーがこのメーカーを有名にしたと言っても過言ではないTwo-Rock John Mayer Signature Model。ジョン・メイヤーのメインアンプはTwo-Rockだったが、アメリカツアーからは影を潜めていた。しかし音的に足りない所があったのだろうか、今回のオセアニア、アジアツアーから復活を果たしたのだ。
(PRS J-MOD 100 John Mayer Signature Model)
(Two Rock John Mayer Signature Model Prototype)
では、11日の公演セットリストからジョン・メイヤーの”現在“を奏でるサウンドを探求してみよう。
オープニングは「ビリーフ」。ライヴの代表曲であり、1曲目に演奏することが多く、今回は当然Silver Skyで弾くのかと思いきや、日本で初めてBlack1を使用。ギターを持った瞬間からコアファンのテンションはMAXへ。やはり「ビリーフ」にはBlack1が似合っていると感じてしまう。ギターの音も曲に合っているからだ。
2曲目に入るときにローディのレネ・マルティネス(スティービー・レイ・ヴォーンのローディ)が下手袖からSilver Skyを持ってくると、ジョン・メイヤーは首を振り、2曲目もこのままBlack1でいくという仕草。そのまま「ムーヴィング・オン・アンド・ゲッティング・オーヴァー」に突入。3曲目の「アイ・ドント・トラスト・マイセルフ」までBlack1で通して弾くという昔からのファンにとっては特大のサービス。3曲通してBlack1を使ったのはオセアニア、アジアツアーでは初めての事で、感激が止まらないままライヴは進んでいく。
(Fender Custom Shop John Mayer Signature Model Stratocaster Black1:2010年発売 世界限定83本)
ジョン・メイヤーは以前からライヴへの向き合い方として「ファンは僕の事を何もわかっていない、僕もファンの事をわかっていない、わかっている気になってはいけない。僕らはライヴで毎回ゼロから分かり合うんだ」と語っていた。ギターを急に変えて使うのも、まずは分かり合う事から始めようという意味なのか?と思わせる行動にも見えるが考えすぎか(笑)・・・
「フー・セイズ」~「ウェイティン・オン・ザ・デイ」はお馴染みでもあるMartin社John Mayer Signature Model 『OM28JM』。不思議なことに、エレキギターはワイヤードだが、アコースティックギターはワイヤレスというシステム。アコースティックギターはワイヤレスのほうが音が良いという持論だそうだ。
(Martin John Mayer Signature Model OM28JM:世界限定404本)
ここからは真打ちSilver Skyの登場!バラードなのにヘビーで重厚な楽曲「チェンジング」のギターソロを間奏、後奏、ものすごい長尺で弾き倒し、Silver Skyのギターの音色が武道館に染み込んでいく。新曲「ニュー・ライト」では日本語も織り交ぜたMCで曲の乗り方(踊り方?)まで伝授するほどで、間奏のカッティングギターはこれまたキレッキレで興奮は最高潮!
インターミッションを挟んだ後半戦のスタートは武道館に満ちた熱気を冷ますかのように1人アコースティック・コーナー。OM28JMをレギュラー・チューニングだけではなく、変則チューニングなども織り交ぜてギターの新たな可能性を惜しげもなく披露してくれる。
ライヴは徐々に終盤へ。「イン・ザ・ブラッド」ではMartin社John Mayer Signature Model『D-45』のズンズンズンという重い8ビートが心臓の鼓動とリンクしていき、その上天才ギタリストでツアーメンバーのDavid Ryan HarrisとIsiah Sharkeyがギターソロを交互に回すからもうこれ以上ない贅沢さで失神寸前。
(Martin D-45 John Mayer Signature Model:世界限定45本)
ライヴの定番「スロウ・ダンシング・イン・ア・バーニング・ルーム」ではFender社Stratocaster1964年製のヴィンテージギターを使用。なんという太いギターサウンド!全身がしびれるクランチサウンドで長尺ギターソロを披露し、満員の客席を最高の熱気へと加速させる。
「イフ・アイ・エヴァー・ゲット・アラウンド・トゥ・リヴィング」ではOM28JMでイントロを弾き始め、ギターソロになると、Grateful DeadのスピンオフバンドDead & Companyでしか使わない、ジョン・メイヤーがP.R.Sと初めて一緒に作ったP.R.S John Mayer Signature Model『Super Eagle』を日本公演で初披露。とことん音にこだわり、出し惜しみなく様々なギターを使う。
(PRS John Mayer Signature Model Super Eagle:世界限定100本)
本編ラスト曲「ディア・マリー」ではMartin社 John Mayer Signature Model OO-45SCが登場。Martinらしい暖かいサウンドが心に沁みる。最後のシンガロング「Oh-Oh-Oh」の大合唱で本篇が終了。すでに放心状態の中、畳みかけるようにアンコールへ!
(Martin 00-45SC John Mayer Signature Model:2012年発売)
アンコールの最後の曲に最もふさわしい「グラヴィティ」をBlack1で演奏!天才的な歌声と魔法のような指使いに涙でステージが観えない私を、これ以上ないミドルのぶっといギターの音が、熱くそして優しく包み込んでくれた。オセアニア、アジアツアーの最終日という事もあり、大団円で幕を閉じる。
ライヴ終了後はプロレスラー中邑真輔のボマイェを喰らったかのような衝撃にしばらく立てず、呆然として椅子にもたれかかり動けない状態から脱するまでどれだけかかっただろうか。このライヴでジョン・メイヤーと分かり合えたと感じることが出来たものの、当分はジョン・メイヤー・ロスで抜け殻のようになることだろう。
素晴らしい武道館でのライヴに感謝しつつ、10月のロンドン公演に出向いて、進化し続けるジョン・メイヤー・サウンドを再び全身に浴びるのを今から楽しみにしている。
Byタキチ
機材提供:熊崎滋