60分を越える本作の収録曲はいずれもジミ・ヘンドリックスの正規アルバムに未収録。『ローリング・ストーン』誌が史上最高と絶賛したギタリストの貴重な完全音源ばかりを詰め込んだ、奇跡の未発表作品である。
アルバムの中心は1969年、ヘンドリックスが怒濤の勢いで創作に打ち込んだ4カ月間に録音したトラックの数々。オリジナル・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスによる最後のスタジオ録音がついにベールを脱ぐ。彼らが『エレクトリック・レディランド』に続くアルバムの礎を築く様子に加えて、陸軍時代の盟友、ベーシストのビリー・コックスを加えた新ラインナップでの最初期セッションも聴ける。
1968年10月の『エレクトリック・レディランド』発売から、1970年のエレクトリック・レディ・スタジオ(ヘンドリックスが最後のプロジェクトで野心作『ファースト・レイズ・オブ・ザ・ニュー・ライジング・サン』に着手する場所)操業開始までの間、ジミ・ヘンドリックスが何を考え、どこに向かおうとしていたのか・・・これまであまり知られていなかったこの時期の情熱を、本作『ヴァリーズ・オブ・ネプチューン』は克明に伝えている。
ジミ・ヘンドリックスが残した音源の中でも公式発表を求める声が高かった「ヴァリーズ・オブ・ネプチューン」を始め、数々の注目曲が収められています。エルモア・ジェイムズの名曲「ブリーディング・ハート」とクリームの「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」の強力カヴァー、自作曲「シップス・パッシング・スルー・ザ・ナイト」「ララバイ・フォー・ザ・サマー」の最初のヴァージョン、エクスペリエンスによる「ヒア・マイ・トレインAカミン」のオリジナル・レコーディング。さらに1967年の『アクシス:ボールド・アズ・ラヴ』セッションで録ったチャス・チャンドラーのプロデュースによる「ミスター・バッド・ラック」もラインナップに。
ヘンドリックス家が営み、ジミ・ヘンドリックスの遺産の管理・保護を担うエクスペリエンス・ヘンドリックス社のCEOジャニー・ヘンドリックスは言う。「兄ジミにとってスタジオは家と同じでした。『ヴァリーズ・オブ・ネプチューン』にはレコーディングにおける兄の卓越ぶりがよく現れています。このアルバムは兄がギターだけでなく、レコーディングにも革命を起こしたことを示す証です。貴重なトラックの一つひとつに類い希な才能の輝きが見えるのです」
今回、オリジナル音源の収録にあたりミックスを担ったのは、1967年『アー・ユー・エクスペリエンスト?』以降、エンジニアを務めるエディ・クレイマー。プロデュースはジャニー・ヘンドリックス、ジョン・マクダーモット(詳細なライナーノートも執筆)、エディ・クレイマーの3人が共同で行いました。尚、印象的なジャケットはリンダ・マッカートニーが撮影した写真にジミ自身が描いた絵を重ね、幻想的でスペイシーな世界を演出しています。